ピリオドのこっちがわ

さまざまな記録と想像

アイスを尊敬する

「おれはひどく冷たいやつだぜ」とアイスは言う。「だが、とても甘いぜ」

 私はアイスを食べることがとても好きで、子供の頃から一日に3回はキッチンの冷凍庫のドアを開け、アイスが入っていないか確認するのを趣味にしている。お母さんがたまに冷凍食品の下にアイスを隠すことも知っているし、姉が私の分のアイスを食べてしまった時にはすぐにわかる。冷凍庫にアイスが入っているのはとても嬉しいことである。それはまるで蕾が花になったかのような感動があり、また宝箱の中におたからが入っているのと同様に、物事が正しい場所に収まっているという充足感を与えてくれる。冷凍庫の中のアイスは生活必需品であり、同時に芸術品でもあるのだと勝手に拡大解釈して微笑んでいる。そういう大人になったことを全然ほこらしく思っている。そして冷凍庫の中にあるアイスは、それを覗き込んでいる私に語りかけるのである。
「おれは固く凍りついているぜ」とアイスは言う。「だが、すぐにとけるぜ」

 かっこいいアイスというのはなかなか存在しないけれど、愛されるアイスというのは世の中にとても多いように思うし、アイスごとに全くキャラクターが違っているということは周知の事実であって、ジャンボモナカはお調子者の感じがするし、レディーボーデンは貴婦人の感じがするし、あずきバーは悟ったご老人のようだし、ガリガリ君は夏の日の少年のようだった。そしてそれぞれのアイスを袋からばりばり出してかじったりすると得も言われる味世界にいざなわれ、私の頭から邪念が消え去り、ただほのかな幸せの感触というものが触知されるのみになって、気がつけばあれだけ存在感をいや増したアイス&クリームはもう跡形もなく消え去っている。骨も皮も残らない。全くの無になって、綺麗さっぱり消えている。その最初から最後までの全部がアイスは美しい。私はアイスを尊敬している。

「おれは君を元気にさせるぜ」とアイスは言う。「だが、たべすぎると腹をこわすぜ」
 アイスは今日も語りかける。